第9章 配送センター計画の進め方
I. 配送センター・システム計画の本質
配送センター計画における「正解」の捉え方
- 多制約下のシステム: 配送センター・システムは数多くの制約条件が絡み合うため、正解は一つではなく、「多数の正解」が存在します。
- 条件と設計の相関: 制約条件の設定方法や計画者の考え方次第で、構築されるシステムは多様に変化します。
- 数学的解法との違い: 初心データを入力すれば唯一の正答が導き出される数学のような性質のものではありません。
- 「最高」の主観性: 計画者が提示する「最高のシステム」は、あくまでその計画者の基準における最適解であり、依頼主にとって最高とは限らない点に留意が必要です。
II. 計画のキーポイントと専門性
- 要求される専門知識: 配送センター計画は、「配送センターの特性」「物流機器の特性」「計画技術」という3つの知識が要求される専門技術です。
- 技術の性質と習得: 物を動かすローテクノロジーな側面もありますが、要素が複雑に絡み合うため実務では迷いが生じやすいものです。例題を読み、経験を積むことで精度(腕)が上がります。
- 計画の視点: 個別の要素を見るミクロの見方だけでなく、システム全体を俯瞰するマクロの見方(全体最適)が必要です。
III. 配送センターの基本システム
配送センター基本システムの定義と客観的アプローチ
- 定義: 機器に依存せず、「EIQデータの数値的条件に基づくシステム」と定義します。
- 制約条件への対処: 初期に特定の機器(自動倉庫等)を前提とすると、その制約に縛られた柔軟性のない設計になります。
- 客観性の確保: 数値に基づき、かつ計画者の仮定条件を明文化することで、誰が計画しても再現性のある論理的なシステムが導出できます。
IV. 最終システムへの展開
基本システムと最終システムの相関について
- 設計のプロセス: 数値基準の基本システムが、現場の諸条件によって変化・適応して最終システムになります。
- 基本の重要性: 基本システムに基づかない設計は、能率の低下や、実運用に耐えない「使い物にならない」システムを招くリスクがあります。
- 正当性の確保: 能率的で実用性の高い拠点を実現するには、まず数値に基づいた基本システムを確立することが不可欠です。
V. システム計画の5つの重要原則
- 多数の正解の存在: 多数の制約条件下での設計であることを前提とします。
- 販売物流の認識: 生産物流とは根本的に特性が異なることを認識する必要があります。
- 全体最適化の追求: 部分最適ではなく全体を見ます。100点はなく、常にあちらを立てればこちらが立たない「トレードオフ」のシステムです。
- 入荷・出荷条件の重視: システムはこれらの条件で決まり、EIQ分析はその中核となる出荷条件の検討手段です。
- 運用のシステム化: 設備(ハード)だけでなく、「どう運用するか」というソフト面もシステムの一部です。
VI. 物流機器選定の優先順位
物流機器選定における注意点
- 特性の不一致: 機器の特性がセンターの特性に合わないと、生産性は著しく低下します。
- 「機器ありき」の回避: 初期段階で機器を選定せず、まず配送センター特性から論理的に機器を導き出します。
- 自動化の落とし穴: 立体自動倉庫などを先に考えると、山積みの方が保管効率やピッキング速度が良いケースでも不適切な機器を選んでしまいます。
VII. 荷姿別に見る主要な保管設備
物流センターのシステム計画においては、荷姿(PCB)の特性に合わせて設備を選択します。
| 荷姿単位 | 主要な保管設備・方法 |
|---|---|
| パレット (P) | 山積み、パレット・フローラック、パレットラック |
| ケース (C) | パレット保管、ケース・フローラック、ケース棚 |
| バラ (B) | ケース保管、バラ棚、引き出し |
VIII. EIQ法の思考プロセス(7つの原則)
配送センター計画では、以下の7つの思考原則が重要です。
- 1. システムの使命を考える
- 2. EIQが物流のキーファクターであることを認識する
- 3. 特性を深く読み取る
- 4. マクロな視点で全体を俯瞰する
- 5. 実務的に有効な精度(よい加減法)を用いる
- 6. 検討を繰り返して精度を高める(繰り返し法)
- 7. 将来を見据え、フレキシブルに考える
IX. 複数案の作成と選定
複数案の作成と最終案選定
- 複数案作成: 条件により多様な案ができるため、概略レベルで数案作成します。
- 最終案の選定: 案をコスト、能率、拡張性などで比較し、最も適うものを選定します。
- 効率的計画: 詳細に作り込む前に概略案で比較することで、手戻りを防ぎ論理的な意思決定を可能にします。